不定記

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9月7日(日)

映画感想

 見てきたわけですよ、あの映画。どの映画かって?…やだなぁ、決まっているではないですか。8/23 に公開になったあのメタル映画、そう…

 グローバル・メタルですよ!

 …デトロイト・メタル・シティかと思ったら大間違いよッ!というわけで、「グローバル・メタル」の感想を色々。

 その前にあらすじ。『なぜメタルは嫌われるのか?』を出発点に監督自らが世界各国を巡り、メタル・カルチャーに肉迫するドキュメンタリー(「DVD NAVIGATOR」データベースより)である「メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー」を撮ったサム・ダンであったが、公開後 世界各国から「なんで欧米のバンドばかりでウチの国のバンドが紹介されてないんだこのウジ虫が(超意訳)」というメールが多々届き、メタルが思っていた以上に世界で広まっている事を知る。いわばメタルのグローバル化である。

 そこでこのサム・ダンは考える…メタルのグローバル化は経済のグローバル化同様、世界を均一化、すなわち既存文化を破壊しようとしているのか?それとも?…というわけで、カッとなって世界を巡ってみた。あらすじ終わり。

 以下感想。但し、私は記憶力が非常に無いのでかなりあやふやな面多し。メモはとったのですが、暗闇の中手探りでとったので解読不能な文字ばかり。

  • まずは ANGRA でお馴染みのブラジル…と私は思うのですが、SEPULTURA の話が中心で炎の女神は全然出てこない。
    • Destruction のジャケ裏に憧れ、乾電池を使って偽ガンベルトを作った話が興味深い。そういう馬鹿は大好きです。
    • ブラジルにはギャラリア・ドゥ・ロックというメタル専門の巨大なモールがあるらしい。行きたい。
      • 「メタル専門店」というものに行った事が無い人は是非とも行くべきです。ネット通販の方が品揃えは良いでしょうが、メタル専門店は そこに居るだけで途轍もなく幸せな気分になれます。
      • ちなみにそこを歩くサム・ダンのTシャツは BATHORY の 1st であった。
  • 日本。言うまでもなく MANIERISME などは登場しない。
    • でも、日本のメタルだったら陰陽座とか凱旋 MARCH みたいな日本的なメタルを紹介して欲しかったなぁ。
    • 日本は「ライブ盤の国」としては有名らしい。確かに結構出ていますね。ちなみに S.O.D.の「LIVE AT BUDOKAN」は、武道館でなんてライブしていないのにこんな名前付けて出したという詐欺的ライブアルバムです。しかしこんな名前で出す(日本盤だけのお遊びでなく、海外盤でもこの名前。)という事は、やはり「日本=ライブ=武道館」というイメージがあるのですね。
    • この映画は元々は日本から始まる予定だったらしい。
    • 日本は X Japan などの「日本で流行ったメタル」を中心に、そうした日本メタルの特異性について。一応最後にオマケ程度に SIGH とかが出てきましたが。
      • マーティ・フリードマンが「激速のメタル曲の直後にバラードとかをやれるのは日本だけ」って言ってたけど、そうかなぁ。北欧メロスピなんかにはそういうバンドも多いような。
    • パンフレットを買ったら、「劇中使用曲」でアルファベットの曲名が並ぶ中で、「食べたいなめたい危険地帯」が思いっきり目立っていて吹いた。
  • 続いてインド。全然知らないなぁ。Demonic Resurrection というバンドが中心。今聴いてみたけどなかなか良いですね。
    • インドではテレビで流れるような曲しか売れず、そして「テレビで流れるような曲」とはインド映画で流れるようなああいう曲の事だそうで。インド人メタラー、「あんなのは弱い人間の聴く音楽だ」とか毒舌全開。
    • 未だ身分差別が残るインドにおいて、音楽は誰にでも平等…というのがインドでの結論。「頭上の空のように誰にでも等しく…」
  • 中国。私からすれば幻世狂想樂隊の国。
    • 唐朝(TANG DYNASTY)というバンドが昔(1988)から活動していて有名らしい。今度知り合いの中国人に訊いてみよう。
    • 最近では Ritual Day というブラックメタルバンドが活動中だそうで。抗う対象はキリスト教ではなく、社会問題や政治腐敗。当局に逮捕されたりしない事を願う。
  • インドネシア。私のメタル専用ブックマークを漁ったらタイとかフィリピンはあったものの、インドネシアは見当たらず。
    • 過去何度か海外のメタルバンドがライブを行ったが、メタリカの際に会場に入れない人間が暴動を起こした所為で以後海外バンドのライブが禁じられてしまったそうな。
    • SIKSAKUBUR というバンドは政治問題をテーマとし、TENGKORAK というバンドは資本大国への反発、シオニズムの破壊をテーマにしているとか云々。重いなぁ。
      • で、TENGKORAK のメンバーが服に×印の付いた鉤十字を貼っていまして。「俺達はシオニズムに反対しているだけでユダヤ人を差別しているわけではない(ナチスとは違う)」とか言っていたのですが、日本でのシーンにおいて一瞬 鉤十字の付いたナチス軍服コスの若者を映していたのは何か日本への嫌がらせですか。
  • イスラエル。Orphand Land の国。初めて「その国の名前を聴いて咄嗟にイメージしたバンド」が出てきた。
    • 言うまでもなく SLAYER「Angel of Death」の話が出てくる。あれをナチス賛美の歌でしかないと理解する人は頭が腐敗していると思うので その腐った脳味噌を捨ててきた方が良いと思います。脳味噌って燃えるゴミですかね。
    • 「宗教で繋がるのは神とだけだ。音楽は多くの人と繋がる事ができる。」蓋し名言である。(でもうろ覚えの上 誰が言ったか忘れた。)
    • SALEM というバンドが Euronymous を殺害した事で有名なナチズム野郎 Count Grishnackh に「曲はいいが(ユダヤ人虐殺を否定的に扱った)歌詞がクソだ」と言われ、反論したところ、小包爆弾を送られたとか。本当にロクでもない奴ですね。
  • イラン。まったく知らない。
    • イランでは長髪というだけで逮捕されるらしい。つまりロブ・ハルフォードやダニエル・ハイメンならオッケーってことですね、わかります。
    • SLAYER がここでも出てくる。SLAYER のロゴ落書きがイランにあったと SLAYER メンバーにメールを送ってきたイラン人が居るらしい。メタルは世界共通語だと思ってるよ…
      • そして映画に出てきたイラン人メタラーが「イランで SLAYER の落書きを見たことがある?」という質問に「ああ、僕も書いたよ」と答えていて吹いた。実はイランは SLAYER の落書きだらけなんじゃなかろうか。
    • ところで Vital Remains のTシャツを着ている人が居たんですが、日本では全然有名じゃなくて国内盤も出てませんが、海外じゃ人気なんでしょうか。
  • 結論。金のねぇ奴は恐喝してでも観に行きやがれ。凄い空いているので快適に観られます。

 あと 9/27 に公開になる「HEAVY METAL IN THE COUNTRY」が気になります。デスメタル好きなら知らない人は居ない有名レーベル「Nuclear Blast」の本拠地である村のお話。でも時間的に観に行けるか微妙。

 その他 最近観た映画。人によってはネタバレと思うレベルの記述につき注意。

 

【ダーク・ナイト】

「○○が××だって?…フン、どうせウソだったって展開だろう?」
 ↓
「ほらやっぱり!シリーズ物でそんな事あるわけないものな!」
 ↓
「ΣΣ(゚Д゚ ;)」

 それはともかくジョーカー格好いいですね。

 

【デトロイト・メタル・シティ】

 まぁなんやかんやで観たわけですが。

 正直言ってあの漫画、「これでメタルへの誤解が広まるんだろうなぁ」とか思ってしまうにもかかわらず結局読んでしまうのは何故だろうかと常々思っていましたが、この映画を観てとうとうその理由に気付きました。しかしそれは悲劇的な事実であったのです。なぜ我々がDMCに惹かれてしまうか…それは、この作品世界内ではメタルが大人気であるから。デスメタルがオリコン上位に入るなんて実に素敵過ぎる世界…しかしそれはつまり裏を返せば現実では(ry

 さて、映画の感想。

  • 「ま、まさかの爆発オチー!?」
    • 爆発は笑いです。偉い人にはそれがわからんのです。「ダークナイト」でも爆発が起こる度ジョーカーがニコニコしていたではないですか。
      • あと梶井基次郎「檸檬」とか。丸善の棚へ黄金色に輝く恐ろしい爆彈を仕掛て來た奇怪な惡漢が私で、もう十分後にはあの丸善が美術の棚を中心として大爆發をするのだつたらどんなに面白いだらう。
  • DMCの曲は比較的デスメタルしてました。声がデス声とは言えない気がしますが、実際デス声で歌ってしまったら歌詞が聞き取れないでしょうから仕方の無い妥協でしょう。許容範囲許容範囲。
    • が、ジャック・イル・ダークの曲は 1 ミクロたりともブラックメタルではありませんでした。鹿を指して馬となすような中国官吏でさえも これをブラックメタルと主張するのは耐えられないことでしょう。やっぱりジーン・シモンズなんて使うんじゃなかったんだよ。
      • じゃぁ誰をダーク役にすればいいのかって?そんなの Dead 様を黄泉帰らせるしかないだろうが!
        • 「出た… Dead さんの 1 秒間に 10 回の散弾銃自殺 ほ 本物だ」「ス スゲェ 俺達の思いが Dead さんを地獄から呼び覚ましたんだ……」
    • あと前から「ファッキンガム宮殿 〜DETROIT METAL COPY〜」とかの音源を聴いた時にも思った事ですが、DMCの曲には なんか Sex Machineguns 臭がするのは何故でしょう。
  • 結論。メタル映画と思って観るのは止めましょう。あくまでもコメディ映画です。

8月25日(月)

レビュー追加

 オリンピック関連ニュースを見る度に「メダル」を「メタル」と空目して反応してしまう全国一億二千万人の皆様、こんにちは。…私だけですかそうですか。そんなわけで Wiki のアルバムレビューを少し前に更新しました。

 上のものほどオススメ度高し。Ensiferum「Dragonheads」はもっとオススメしたいところですが、ミニアルバムなので「買うならフルアルバム」という意味を込めて少し下げる。Adagio「UnderworlD」も低くなっていますが、こちらは Adagio 未聴の人なら買うべし。

 ところで、当たり前の事ながら このようにオススメ度には違いがあるわけですが、自分のレビューを読み直すと、私の中でのオススメ度と 文章を読んで感じるであろうオススメ度が結構違う事がよくあります。本当は凄いオススメしたいのに文章を読んでも全然そそられなかったり、或いはその逆だったり。

 手軽にオススメ度を示す方法として「点数付け」という方法がありますが、こういう方法を使った方が良いでしょうか。(やるとしたら 100点満点とかだと点数を付けにくいので、iTunes みたいな五つ星くらいで付ける事にすると思います。)

 でも、私だけのレビューだったら自由にやっていいんでしょうが、一応 Wiki という形で誰でも自由にレビューできるようにしているわけで。一人だけ点数付けするのもなんか浮いていますし、他の人にまで点数付けを強制するのも良くないでしょうし、そもそも投稿済レビューはどうするのかという問題もありますし。どうしたものか。

 そして未聴の CD が 13枚、未レビューの CD が 31枚あるんですが、これもどうしたものか。

RPG 戦闘システム考(番外編)

 前回から二ヶ月近く経ってしまいましたが、にも関わらず本題ではなく番外編。

 前回の話の要点は、「戦術性がある――すなわち(戦闘前ではなく戦闘中に)頭をしっかり働かせることで、戦闘を有利に進める事ができる」かつ「ザコ戦においては、何も考えずボタン連打でも勝てる」ような RPG 戦闘システムが欲しい――というものでしたが、なんとなく昔作ったゲームを引っぱり出していたら、この点から見てなかなか面白い戦闘システムの RPG を再発見したので、せっかくだから紹介してみます。


the Aniki スリ

 このゲームは、私の作ったシリーズゲーム「the Aniki」の第3弾にあたります。3 → スリー → スリ、と。「ぷよぷよ SUN」みたいなネーミングだと思って下さい。

 で、その戦闘システムですが、一言で言えば「じゃんけんほいほい」です。…「じゃんけんほいほい」が私の生まれた地方独自の遊びかもしれないので解説すると、「じゃんけんほいほい どっち出すの」と言いながら両手を使ってグーチョキパーの中から二つ出し、その後「こっち出すの」で そのどちらかを出すという、じゃんけんの派生遊びです。

 通常のじゃんけんは基本的に運の勝負ですが、「じゃんけんほいほい」には『駆け引き』が生じてきます。

 「じゃんけんほいほい」において その手のパターンは 6×6 = 36通りあるわけですが、このルールでは両手とも同じ手を出す意味は無いので考える必要はありませんし、さらに「同じような状態」を纏めて「一方は常にグー・パー」という事にしてしまえば、結局は以下の3パターンのみになります。

  • 「グー・パー」対「グー・パー」
  • 「グー・パー」対「グー・チョキ」
  • 「グー・パー」対「パー・チョキ」

 一つめはお互いパーを出すしかありませんが、二つめは前者からすると「グーならば負けは無い」状況です。だからグーを出す…と言いたいところですが、後者が「前者はグーなら負けないからグーを出してくるだろう。チョキだと負けるのでこっちもグーだ。」と考えてグーを出してきた場合、前者は裏をかいてパーを出せば勝つ事ができます。が、その場合 後者がそのさらに裏をかいてチョキを出してきた場合負けてしまいます。このように、「裏をかくか、かかざるか」という駆け引きが生じるのです。(ちなみに三つめは、結局は二つめが前後逆転したケースと同じ。)

 …で、本題の「the Aniki スリ」の戦闘システム。

 前述の通り「じゃんけんほいほい」を元にしたシステムであり、「パンチ(グー)」「キック(パー)」「特殊(チョキ)」(と、実際にはさらに「その他」という第四の選択肢があるが、説明の都合上ここでは無視。)の三種類の攻撃方法があります。

 この中から二つを選ぶと、敵も同様に二つを選んでいるので、それを見て自分の選んだ二つのうちどちらかを選ぶ。すると敵も同様に選ぶ。

 そして、あいこの場合は双方が攻撃できる(順番はランダム。)のですが、勝った場合は一方的に攻撃でき、負けた場合は一方的に攻撃される――というシステムになっています。

 これだけだと「じゃんけんほいほい」と殆ど変わりませんが、より戦術性を高めるシステム上の工夫があります。

  • 攻撃方法によって(特に敵には)強さに差がある。そのため例えばグー攻撃だけが強い敵と戦う場合、「最初の二つの選択」で一つは「パー」を選んでおく事で、強力なグー攻撃を喰らう事を防げる。
  • 主人公側には「技レベル」という概念があり、最終的に選択した攻撃方法は(たとえ じゃんけんに負けて発動できなくても)技レベルが1上がり、より強力な攻撃ができるようになる。
  • 逆に、「最初の二つの選択」で選ばなかった攻撃方法は、技レベルが1に戻ってしまう。
  • 「最初の二つの選択」で二つとも同じ攻撃方法を選んだ場合、二つめの選択肢が、一時的に技レベルが3上がる。

 基本的に「じゃんけん」が運の勝負であるのと同様に、「じゃんけんほいほい」においても「最初の二つの選択」は運の勝負でした。が、1〜3つめのシステムによって、「最初の二つに何を選ぶか」の時点から駆け引きが生じてきます。また、4つめのシステムによって、「じゃんけんほいほい」では意味が無かったので無視できた「両方とも同じ手を出す」という行為に意味が生まれ、より戦術に幅が出てきます。

 このように、我ながら なかなか戦術性のある面白いシステムだと思うわけですが、当時はあまり戦闘システムの事などは考えていなかった為、この「the Aniki スリ」には欠点もあります。が、そうした欠点の多くは少しの工夫で改善可能です。

欠点 1 : 敵がマヌケ

 せっかくこうした戦術性を高められるシステムになっているというのに、敵がマヌケなのでシステムを生かしきれていません。

 具体的にどうマヌケかというと、まず「最初の二つの選択」が完全にランダムです。先程説明した通り、せっかく「最初の二つに何を選ぶか」の時点から駆け引きが生じているというのに。

 また、「最終的な選択」もややマヌケです。まず、自分が「グー・パー」でプレイヤーが「グー・チョキ」だった場合、「グーならば負けは無い」思考しかせず、裏をかく事をしません。さらに、こちらの力量などは一切考えません。例えば先程の状況で「プレイヤーのグーレベルが9、チョキレベルが1」だった場合、負ける可能性があろうがパーを出して強力なグー攻撃を防ぐ方が得策ですが、そうした思考は一切しません。

 この辺をしっかり考えたもう少し高度な AI を使い、さらに敵に個性を付ければ(裏を積極的にかく奴、安全策をとる奴、etc...)、よりこのシステムを生かせたと思います。

欠点 2 : ザコ戦が「ボタン連打」では勝てない

 最初に書いた通り、私の考える理想の戦闘システムには「ザコ戦においては、何も考えずボタン連打でも勝てる」という点も重要です。それがこのゲームでは実現できていませんでしたが、これも工夫次第で改善可能です。

 まず、ボタン配置の工夫。例えばスーファミ風コントローラーで言うと、まず「最初の二つの選択」では「Yがグー、Bがパー、Aがチョキ」とし、続く「最終的な選択」では「X/Yは一つめ、A/Bは二つめを選択」などというボタン配置にします。こうしておけば、Y/B/Aのどれかを連打すればとりあえず進行はするので、戦術シミュレーション的 RPG のように「ボタン連打だけでは、戦闘が進みすらしない」という事態は防げます。

 しかしそれだけだと、ボタン連打では 常に「両手とも同じ手」なので、じゃんけんに負けて敵の一方的な攻撃を喰らいやすくなってしまいます。戦闘自体は進むものの こちらの攻撃がなかなか発動せず、結果的に戦闘がなかなか終わらなかったり 或いはザコ相手に負けてしまったりして、プレイヤーのストレスとなってしまいます。

 そこで、「敢えてザコの AI はアホにする」という手が考えられます。要するに、こちらの手などお構い無しにランダムに手を選ばせる。そうする事で、一方的に攻撃を喰らう可能性が非常に減りますし、連打するボタンをA/Bのどちらかにした場合、前述の通り「二つとも同じ攻撃方法を選んだ場合、二つめの選択肢が、一時的に技レベルが3上がる」というシステムがある以上、こちらは強力な技を出しやすくなるのでザコ戦を早く終わらせることができます。

 

 …さて、以上のこの「the Aniki スリ 〜改善版」戦闘システムは如何でしたでしょうか。なかなか良い戦闘システムだと思いませんか?

 が。実は非常に大きな欠点、それも前述の欠点のように工夫次第で改善できるような性質ではない根本的な欠点が存在するのです。それは、一対一の戦闘にしか使えないという点。この戦闘システムを使う為には、主人公側が常に一人で戦うようなシナリオでなければなりません。つまりシステムの為にシナリオを制限する必要があるのです。ドラクエ風戦闘システムが多く使われている一つの理由は、応用が効くという点にあると言ってよいでしょう。どんなシナリオ/世界観だろうが使う事ができるのです。こうした応用性の高さというのも実は重要な要素であって、それも考慮した応用性と戦術性を併せ持つ戦闘システム…の話は、また次回。さて、次は何ヶ月後でしょうか。

せっかくだから、俺はこの赤の「the Aniki」シリーズを紹介してみるぜ!

 というわけで意味も無く、上述の「the Aniki スリ」を生んだ「the Aniki シリーズ」がどんなものかを紹介してみます。

 そもそも この「the Aniki シリーズ」は、私が「Click & Create」というゲーム製作ツールを購入したところ、付属グラフィック素材の中にあまりにもインパクトありすぎるものがあったので、「この素材を使ってゲームを作りたい!」と思ったところから生まれたものでした。


全ての元凶グラフィック素材「金色ファイター」

 まさかそんな理由で生まれたゲームがシリーズ化し4作も作る事になるとは…

 


the Aniki

【特徴】

 第1弾。このゲームの最大の特徴は、そのスケールの大きさ。…と言っても、ストーリーなどのスケールが大きいわけではありません。文字通り、scale(目盛)が大きいのです。


右上の単位に注目

 見て下さい。体力の最低単位、億! …男気(要は MP )の最低単位、兆!! …さらには途中のミニゲームのスコアの最低単位、京!!! …カンストが 9999 の FF など敵ではありません。なにしろ序盤の雑魚ですら億単位のダメージを与えてくるのですから。はっきり言って、スケールでこのゲームに勝てるゲームは現在存在しないでしょう。

 システム的には比較的普通な 3D 迷宮 RPG です。

【ストーリー】

 世界一のアニキ(自称)、ゴールデン。突然謎の煙によって意識を失った彼が目覚めると、そこは未知の迷宮だった――果たして彼はこの迷宮を脱出できるのか?

 …色々あって、友人のレッドと共に戦闘機で脱出したゴールデンであったが、なんと何者かが戦闘機の上に乗っているではないか。ゴールデンが向かったところ、自分自身にそっくり(であるが、黒い)謎の男。その男曰く、彼の名は「ブラック・ゴールデン」。ゴールデンが眠っている間に DNA を採取され作られたクローン人間であるという。ゴールデンに黒なのか金なのか判りにくい事を指摘され、逆上したブラックゴールデンが襲いかかってくるッ!

 


the Aniki 痛

 一年以上の時が流れた後に作られた、作者ですら予期していなかったまさかの続編。

【ストーリー】

 無事ブラックゴールデンを倒し迷宮を逃げ出したゴールデンたちは、のほほんと暮らしていた。ところがある日突然レッドが謎の激痛に襲われる。(←この辺が「痛」。)医者に見せたところ、男気の使い過ぎが原因である「男気使いすぎ症」とのことであり、山奥で仙人が守っている「男気の実」を使う事で治せるという。仙人は悪い人ではないので、事情を話せば実を渡してくれるとの事。

 レッドの弟グリーンと共に山に向かおうとしたところ、見覚えのある影が立ちふさがる。それはかつて倒した筈のあの男ッ!

BG「久しぶりだな、ゴールデン!」
ゴールデン「むぅっ!貴様はブラック・ゴールデン!生きていたのか!?」
BG「暇だからついてくよ。」
ゴールデン「ああ、いいよ。」

 …というわけで、ゴールデン・グリーン・BGの三人が山に行ったところ、話が違う事に 仙人は男気の実を渡してくれないばかりか、襲いかかってきたッ!


仙人です。誰が何と言おうが仙人です。

 仙人を倒したところ、実は「男気の実」を奪われてしまったので その事を隠す為に襲ってきたとの事。そこで男気の実を奪った輩の元へ向かった三人であったが、敵は男気の実の力で巨大な姿となっていた。からくも敵を倒した三人は、これほど強大な力を生み出す男気の実の力を恐れ、実を全て埋めてしまい、その結果世界に平和が訪れた――そしてレッドは苦しみ続けた――

【システム】

 当時はそんな言葉知りませんでしたが、今のジャンルで言えば「リアルタイムストラテジー」が一番近いかもしれません。三人のキャラクターをマウスで上手く操作して戦います。

 …が、操作性が非常に悪く、はっきり言って失敗作です。

 


the Aniki スリ

【ストーリー】

 ある日スリに財布をスられたゴールデン。スリに「漢の道」を説くべく追いかけたところ、男は洞窟に逃げ込んで行った――

 そんなこんなでスリを捕まえたが、スリの「私はこの奥にいる奴らに頼まれただけ」というデタラメに騙され奥へと進んでいくゴールデン。その奥では、クローンを作る実験が行われていた――そしてその最奥にいたのは、かつて共に戦った強敵(とも)、BGであった。
「なぜ、お前がこんな…」
「俺とお前は生まれたときからの敵……。 死にたくなくば、殺す気でかかってこい!」
宿命の戦いが始まるッ!

 …BGを倒したゴールデン。だがその瞬間、凶弾がBGを貫く。
「な…いったい誰が…」
「俺はクローン…作られた存在… 創造主に勝つことなどできないのだ…。逃げれたと思っていたが、結局俺は奴の掌の上にいたんだ… 結局捕まりクローン作りに協力させられ… そして、今度はお前と戦うように命じられ… そして奴は、負けた俺を始末しようとこうしたわけだ…」
「…一体誰が… 誰がお前を造り、そしてお前を撃ったんだ!?」
「お前とグリーンと旅したの…楽しかったぜ… 奴の名は…パープル!!(がくっ)」
「パ…パープルだと!?」
パープルとは誰なのか!?BGの生死は!? やたら思わせぶりに次回へ続く…

【特徴】

 戦闘システムは前述の通りですが、このゲームでは次作にも用いられる RSRS という革新的システムが初登場しています。

 RSRS とは「ランダムスタッフロールシステム」の略であり、エンディングでのスタッフロールにおいてスタッフ名をランダムに生成する事により、実際には一人で作っているにもかかわらず もの凄い大人数が関わっている壮大なゲームっぽく見せかける事ができる斬新なシステムです。しかし、虚しさに耐える心の強さが無いと使えない禁断の魔剣です。素人にはオススメできない。

 そんなわけで、「この物語はフィクションです」という注意書きのある小説/漫画/ゲーム等は数あれど、「このスタッフロールはフィクションです」という注意書きを出したゲームはこれが世界最初ではないかと思います。そして多分世界で最後。

 


the Aniki 死

 最終作。タイトルでネタバレしている通り、アニキことゴールデンの死によってシリーズの完結を迎える。

【特徴】

 システム的には(結構コロコロ変わったりしますが、基本的には)普通の横スクロール ARPG。

 さて、面白いゲームを作るには 面白い既存ゲームの要素を取り入れるのが一番手っ取り早いですが、このゲームもいろいろな既存ゲームの要素を取り入れているものの、取り入れているのがクソゲー・バカゲーという、明らかに間違った方向へ行ってしまったゲームです。

 例えばセーブポイントが何故か全てエコール関係だったり。


「せっかくだから、俺はこの赤のセーブをしたぜ!」

【ストーリー】

 長文注意。これでもだいぶ削ったのですが。

 BGを造った男、パープル…ゴールデンによれば、奴こそは 近年(裏での様々な悪事によって)急速な成長を遂げた会社「紫コーポレーション」の影の支配者であるという。パープルを倒す為には、まずパープルの居場所を掴まなければ…ということでゴールデンとグリーンでパープルについて情報を調べていたところ、「かえん」の部下という男たちに襲われる二人。

ゴールデン「かえん…まさか『パープル四死魔族』の一人、『ズッコケのかえん』の事か!?」

 それほどの側近ならば、パープルの居場所を知っているかもしれない…というわけで、かえんの家に向かう二人であった。ちなみに、残りの「四死魔族」は一切登場しない。というか考えてもいない。


かえんの家がわからないので、とりあえずタクシーに頼る二人。


ついに現れた強敵、かえん!強敵です!強敵ですってば!

 かえんの家に乗り込み一度はかえんを倒した二人であったが、改心したと見せかけ不意をついたかえんの攻撃によってグリーンは金縛りにあってしまう。
ゴールデン「貴様!改心したのは偽りだったのか!? 貴様だけは許せん!」
かえん「くらえ!」

 突然かえんから投げつけられたものを思わず手に取ってしまうゴールデン。それは、バスケットボールであった。

ゴールデン「!? なんのつもりだ!」
かえん「動くな!」
ゴールデン「動くなと言われて動かないとでも思うか!」
かえん「ふ…俺は貴様のためを思って言ってやってるんだ!」
ゴールデン「…どういうことだ?」
かえん「貴様は既に二歩歩いた。あと一歩でも歩くと…トラベリングだ!
ゴールデン「し…しまった!これでは動けない!」
かえん「こうして敵の動きを封じ、その隙に殺す… それが俺が『ズッコケのかえん』と呼ばれる由来よ!」
グリーン「わ…わからーん!」

 とにもかくにも危うし、ゴールデン!…だがその時、天から高らかな笑い声と共に、あの男がやってきたッ!

「BG!治ったのか!」
「怪傑BGのいる限り、この世に悪は栄えない!…くらえ!BGパーンチ!」

 というわけで改めてかえんを倒した三人は、かえんから紫コーポレーションの本拠地を聞き出し、(中略)パープルの悪事の証拠を手に入れた三人は、その悪事の証拠を新聞社に持ち込むという RPG らしからぬ社会派な方法でパープルを追い詰めようとする。

 だが、証拠を新聞社に持ち込んだところ、突然社員に襲いかかられる三人。

ゴールデン「な…なぜ… はっ!? ここは紫コーポの子会社、『紫新聞社』じゃないか!」


気付け。

 ゴールデンのドジっ子ぶりによってチャンスがピンチになり、逃げ出す三人。気付けばゴールデンの故郷へと来ていた。懐かしさに 自分の過去を語り始めるゴールデン。だがその時、三人の前に紫の男が現れる。

ゴールデン「奴こそがパープル…そして俺のダディであり、俺の母上と弟を殺した奴だッ!」

 パープルに戦いを挑むゴールデンであったが、パープルの「パープル流ケンカ殺法」の前に為す術無くやられてしまう。(中略)グリーンとBGの活躍によって、パープルの居場所を掴んだ三人は再戦を挑む。

 そんなこんなでパープルを倒した三人であったが、敗れたパープルが語り出した衝撃の事実。パープルはゴールデンを守る為、仕方無く「奴」の命令を聞いていたのだという。「奴とは…誰なんだダディ…!」その時、巨大な影が彼らを包む。見上げるとそこには巨大な空中要塞が。

パープル「お前はあの空中要塞へ行かねばならぬ…!」
ゴールデン「なんだって!あんな高いところどうやって…」
パープル「それを可能にするのがパープル流ケンカ殺法奥義、『空中浮遊』!」
ゴールデン「空中浮遊!!? 一体どんな技なんだ!想像もつかないぜ!」
パープル「その技を使えば空中を自在に飛べることうけあい…」
ゴールデン「スゲェ!なんてミリタリーな技なんだ!…で、どうやるんだいダディー!!?」
パープル「奥義、『空中浮遊』を行うのに1つだけ必要なもの、それは…気合いだ!!
ゴールデン「わかったよ!ダディー!気合い…気合いだね!」

 というわけで気合いで空中浮遊をマスターし一人空中要塞へと乗り込んだゴールデン。そこで待っていた男――「!!!? お前は…そんな馬鹿な… …お前は確かに…」「『パープルに崖から落とされて死んだはず』…とでも言いたいのか?」――それは、かつてパープルがゴールデンの目の前で殺したと思っていた彼の弟、シルバーであった。実際にはパープルは邪悪に目覚め自らの母を殺害したシルバーを殺してでも止めようとし、それに失敗し シルバーの強さを理解したパープルは、せめてゴールデンだけでも守る為にシルバーの忠実な部下として全ての汚れ役を買っていたのだ。

ゴールデン「お前だけは絶対に許さんぞ!お前の狂気を俺は破壊してみせる!」

 しかし、そんなゴールデンの言葉を鼻で笑うシルバー。かつてゴールデンは弟思いの優しいアニキであった…そんなゴールデンには、弟である自分を殺す事などできないと高を括っているのだ。

シルバー「殺せるのか?この俺を…この俺を!」
ゴールデン「……」
シルバー「…殺せるのか?殺せないのか?それとも…なんだ?」
ゴールデン「…オーディエンスお願いします!」


当時流行ってたんだよねぇ。

 ついにライフラインを使用するゴールデン。(中略)オーディエンスに続き 50:50、テレフォンと全てのライフラインを使いきり、「目の前で750万円の小切手を破って見せる」というみのもんたシルバーの心理攻撃にも耐え、遂に「殺せる」というファイナルアンサーを導き出したゴールデン。真の邪悪との戦いが始まるッ!

 シルバーの強大な力を前に苦戦するゴールデン。しかし、彼は一人ではないッ!

グリーン「俺も空中浮遊をマスターして助けに来たぜ!」
BG「ゴールデンの敵は俺の敵…そうだろう?」

 グリーンとBGも空中浮遊をマスターして空中要塞へと乗り込んできたのだ!
 ちなみにこの文章を書くにあたって久々にこのゲームをプレーしているわけですが、バカゲーだというのに この展開・演出に結構燃えてしまったのは内緒です。というかまぁ自分が作った以上 自分の燃え属性を把握していて当然といえば当然なんですが。

ゴールデン「弟とて手加減無用!覚悟しろ!」
グリーン「この世を支配するのは力じゃない!男意気だ!」
BG「お前を倒せば俺は本当の意味で自由になれる!」

 そしてグリーンを倒し要塞から脱出した三人であったが、シルバーは最後の力で空中要塞を首都へと落とそうとする。「シルバー…兄として、貴様の悪事は許すわけにいかん!」なんと空中要塞を受け止めるゴールデン。しかしこのままでは結局潰れてしまう…「こうなったらあの技を使うしかない…! 必殺!ゴールデンスーパーロンリナイトパワー!」ゴールデンの必殺技が、空中要塞を弾き飛ばす。

グリーン「アニキ…!すげぇ!さすがはワイらのヒーローやわー!」
ゴールデン「燃えたよ・・・・まっ白に・・・・燃えつきた・・・・」
BG「…ゴールデン…?」
グリーン&BG「ゴールデン…ゴールデン… ゴールデンアニキいぃーー!!

 

 …というわけで、アニキシリーズはこれにて完結したのでありました。その後 番外編的な格闘ゲームを作ろうとしたりもしましたが、結局製作途中で放置。

 それにしても、昔作ったゲームは何か変な勢いがありますね。こういうゲームは今の私には最早作れまい。

XREA 無料サーバ広告にウイルス感染の危険があった件

 …との事ですが、当サイトでは 問題の iframe が入る自動広告挿入は使わず、手動で iframe を使わない形式で広告を挿入しているので、問題無い筈です。多分。

 とはいえ、今月上旬にまた同じ事が起きたようで…こう何度もあると、他にも色々問題ありそうで別のサーバに移った方がいい気がしてきます。無料の割に応用効いて非常に便利なんですけどねえ、XREA。

6月30日(月)

RPG 戦闘システム考

 RPG の戦闘システムは、ドラクエ風(さらに元を辿れば Wizardry 風と言うべきでしょうが、日本での知名度という点でこの表現を使います。)のものが殆どです。ファミコン時代なんかには ドラクエとはまったく異なる挑戦的な戦闘システムの RPG もありましたが(例:頭脳戦艦ガル)、今では 特殊なシステムを取り入れている RPG は多々あれど、あくまで骨子はドラクエ風で、それにちょっぴりアクセントを加えてみました的なものばかり。

 これだけドラクエ風の戦闘システムが一般的になっているという事は、ドラクエ風戦闘システムがオーソドックスな面白さを持っているからであると言えましょう。長い間使われ続けるものには、使われるだけの良さがあるものです。

 …が、だからといって RPG の戦闘システムがドラクエ風戦闘システムで「完成」されているのかと言われると、私は否定せずにはいられません。――私が思うに今の RPG 戦闘システムには、「戦術性」が足りない。

 そう言われると「いや、戦術性のある RPG なんて沢山ある。」と 幾つかの作品名を挙げて批判される人も居るでしょうが、それは「戦術性」ではなく「戦略性」ではないでしょうか。戦闘前(特にボス戦前)に その敵の弱点に合わせて装備や編成を整えるとか、あるいはパーティ編成やキャラクターの育て方をどうするかといった事は、どれも長期的概念である「戦略性」です。そうではなく、戦闘中における駆け引きである短期的な「戦術性」というものが、ドラクエ風戦闘システムには欠けているように思えます。

 実際、適当な RPG のボス戦を思い出して下さい。こんな感じではないですか?

  • 最初にパラメータ増加/減少等の補助魔法を使う。
  • まだ敵の弱点が判らないなら、色々な属性の魔法を使ってみる。
  • 回復役以外は強力な技・魔法 / 敵の弱点属性の技・魔法を使い、回復役は体力が減っているキャラがいれば回復魔法。
  • 補助魔法が切れたら再度使用。

 プレイヤーの性格やゲームによって多少は異なるでしょうが、基本はこんな感じでしょう。これだけパターン化できるという事は、戦闘中にあまり考える必要が無いという事であり、それはすなわち戦術性の欠如と言えます。もっと戦闘中に色々考える必要のある戦闘システム――つまり、戦術性のある戦闘システムが欲しいのです。

 ただ、過去に「戦術性のある戦闘システムを持つ RPG」というものが無かったわけではありません。例えば、「戦術シミュレーション」のように「位置」の概念を取り入れたタクティカル RPG。(私の知る例を挙げるなら、「ライトファンタジー」とか。)何しろ戦術シミュレーションのシステムを取り入れているわけですから、普通の RPG に比べ戦術性があるのは当然です。

 が、こうした戦術性重視なシステムの RPG は大抵流行りませんでした。何故なら、通常戦闘が非常に面倒になってしまうからです。RPG においては ボス戦の数十/数百倍もの数の通常戦闘が行われ、そうした通常戦闘にまで戦術性が求められては、非常に面倒なゲームになってしまいます。戦術シミュレーションの場合 ある意味全戦が普通の RPG におけるボス戦みたいなものなので問題ありませんが、そうしたゲームのシステムを RPG に直接持ち込むのは失敗と言えます。

 戦闘システムだけでなく難易度設定にも関わってくる話ですが、ザコ戦は「決定ボタン連打で勝てる(が、しっかり考えて戦う方が少ないコストで勝てる)」くらいが良いと私は考えています。(まぁあくまでそれは基本の話であって、意図的なマゾゲーとか ラストダンジョンや隠しダンジョンのザコ戦とか そうした場合はまた例外。)そのためには、「決定ボタン連打で(スムーズに)進められる戦闘システム」である事が最低条件です。戦術シミュレーション的戦闘システムの殆どは、決定ボタン連打では戦闘がマトモに進みすらしません。ちなみに「女神異聞録ペルソナ」はそれで投げました。

 さて、ボス戦においては戦術性が求められつつも 通常戦闘にはそれを必要としないわけですが、かといってボス戦だけ異なる戦闘システムを用いるというわけにはいかないでしょう。つまり、同じ戦闘システムを用いつつも、通常戦闘は戦術無しでも問題無いのに ボス戦においては戦術無しでは難しい…という差を生み出す仕組みを作らなければなりません。

 じゃあ一体どうすればいいのか――というところで、次回に続く。

 

 以下余談。

 ドラクエ風戦闘システムが未完成だと思っている人は決して少なくはないと思いますが、それへの改善策として「アクション性」(時間制)を取り入れる方向に行っているものが多い気がします。その代表は言うまでもなく、4 からアクティブタイムバトルを取り入れた Final Fantasy シリーズ。

 でも、アクション性って戦術性とは逆方向なんですよね。例えば、急がないといけないから じっくり考える余裕が無くなったり。

 それから、非ターン制のゲームは「次に誰が行動するか」というのが予測しやすい。「予測がまったくできない」のは戦術の立てようがありませんが、かといって「予測しやすすぎる」のも戦術面で不利になります。

 非常にシンプルな状況例を挙げると、自分の体力が 60/100 で、敵の一撃が 30ダメージで、自分は 60回復する回復魔法が使えるとします。この時、一般的なターン制 RPG のようにどちらが先に行動するか(素早さからある程度予想はできても完全には)判らない場合、「回復魔法を使うか否か」が一つの駆け引きになります。回復魔法を使う場合、敵が先に行動してくれればいいですが、自分が先に行動してしまったら 60回復できる魔法で 40しか回復できず、やや無駄になってしまいます。が、だからといって回復魔法を使わないと、次のターンは体力 30/100 になってしまい、敵が先制した場合死んでしまう危険な状況。素早さや敵の残り体力などから、どちらが有利かを判断する必要があります。

 しかし、「次に誰が行動するか」が予測しやすい非ターン制の RPG の場合、こうした駆け引きが無くなってしまいます。完全な予測ができてしまえば、そこには戦術性は無くなります。将棋に戦術性がある事を否定する人はそうは居ないでしょうが、同じ二人零和有限確定完全情報ゲームである三目並べに戦術があると言う人はどれだけ居るでしょうか?

 …とまぁ色々書きましたが、単に私がアクション苦手ってだけの話な気もします。ところで そんな私が珍しくアクション性を取り入れて成功していると思うのは、MOTHER 2 のドラムカウンター。普段はじっくり考える余裕があるけれど、致命的なダメージを受けた時には焦らないといけない。アレは「同じゲームシステムで二面性を持たせる」という意味で今回の話とも通ずる実に良いシステムです。FF のアクティブタイムバトルと違って特許とか取ってないんだから、みんなもっとあのシステムをパクればいいと思います。

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